林業×酪農=森林酪農

いま、日本酪農界は存亡の危機に立たされている。輸入穀物飼料の高騰、牛乳の消費減退などにより、生産価格を上回る経費の増大で再生産すら出来なくなっている。この輸入飼料に依存した工業的酪農の問題を、私はすでに30年もまえから指摘してきたが、今まで関係者に伝え切れなかったことに忸怩たる思いがある。
日本の酪農は戦後アメリカの余剰穀物の輸入を前提に規模の拡大を行ってきたわけであるが、生産性の高い日本の国土生産を無視し、いたずらにアメリカの飼料に依存した結果、なるべくしてなった結果である。



そもそも酪農は人間の食に供することのできない草などの植物を牛の介在で栄養豊富な牛乳を生産することに意義があるのであって穀物を与える必然性はないのである。
日本国土の70%の山々が豊富な植物を抱えながら放置されている状況にある。この豊富な植物(草、木の葉、笹など)が牛の餌になり輸入飼料に依存した酪農からの脱却が可能となる。牛が森林の下草を食べながら森林を管理することで林業施行の軽減となる。



日本の林業も輸入外材に押され壊滅的状況にあり、山々は荒れ果て松くい虫、倒木、つる植物の繁茂、など用材としての価値さえ生み出されなくなってきている。今後、外材が尽きることなく輸入が続くと言うことはあり得ないことである。
そのような中、国内の木材の生産は30~50年と言う長いスパーンで考えなければならない。このことは輸入がストップした段階で手を打っても遅いのであり、現時点から早急に森林の管理をする必要に迫られている訳である。
しかし、現時点で森林を管理をしても、当然のことながらそこからは収入を得ることは出来ない。30~50年後のためとはいえ現時点での収入がなければ森林の管理をしようとする人はいないのが当然である。



 そこで森林に乳牛を放牧して牛乳の生産で日々の収入を求め、牛の採食による下草刈り(舌草刈)を活用して森林を管理するわけである。牛の舌草刈で整地された森林は間伐、枝打ちなどの作業は非常にやりやすくなる。森林作業で最も重労働は下草刈りであるからこの作業を牛に代わってもらえば人間の森林作業は大幅に省力化できる。
 酪農生産観点からみれば牛を放牧することで、餌の自給、糞尿処理作業の軽減、家畜福祉の向上に資することができる。自然な植物を豊富に食べることによって生産される牛乳や肉の安全性が確実に保証されるのである。